感じた違いを言葉にし、ペアリングで味覚の世界を広げる。フレーバーホイールと記録で、この体験を定着させましょう。
今でこそ浅煎りの花のような香りが大好きですが、コーヒーを学び始めた頃の僕は、深煎りしか受けつけなかった。
浅煎りを「すっぱい・コーヒーじゃない」と感じていた時期が、長くありました。深くてビターで、苦味の向こうにカラメルの甘さがある ── それが 「コーヒー」 の像として、舌の中に固定されていた。
転機は、あるロースターで出された エチオピア・イルガチェフェのナチュラル。冷めかけた一杯を一口含んだ瞬間、「これ、コーヒー?」と声が漏れた。ジャスミンと桃とオレンジとベリーが同居していた。
あの日から僕の味覚は、一段ずつ開いていった。浅煎りの方向に広がり、やがて中煎りの甘さ、深煎りの複雑さも、それぞれ別の魅力として聴けるようになった。
味覚は変わります。変わっていい。今の「好き」を否定する必要はなく、次の「好き」を怖がらずに迎える── それだけで、コーヒーという飲み物は、一生の友人になってくれます。
感じた香味を「ことば」に変える地図。中心から外に向かって、大分類 → 中分類 → 小分類と細かく分岐していきます。

① まず中心の 大分類(Fruity / Floral / Nutty-Cocoa / Sweet / Sour-Fermented / Roasted / Green-Vegetative / Spices / Other)から選ぶ
② 次に隣の環(中分類)で絞る
③ 最後に外環(小分類)で、具体的な食材名に落とす
大切なのは 「正解を当てる」 ことではなく、「自分が今、何を感じたか」を言葉にすること。迷ったら「自分の知っている食べ物に近いもの」で OK。
※ 第 1 号 実践編では、ホイールを触って拡大できる見開きページをご用意しています。
画像提供:スペシャルティコーヒー協会 — Coffee Taster’s Flavor Wheel
sca.coffee/research/coffee-tasters-flavor-wheel
Licensed under CC BY-NC-ND 4.0
飲み比べの記録が揃ったら、ホイールの言葉を使いながら表のように横並びにしてみましょう。産地別・精製別・好き度 ── この 3 軸で俯瞰すると、自分の好みの傾向が浮かび上がります。
縦軸|届いた豆を並べる
横軸|香り・酸味・甘み・ボディ・余韻・好き度
各項目を 1〜5 の 5 段階で記入。数字より、「記憶したキーワード」を書き添えるのが、後で見返す楽しみに。
どの傾向も「正解」です。あなたの傾向がわかった瞬間、次にお店で豆を選ぶとき、迷わなくなります。
第 1 号 では「焙煎度」でペアリングを考えました。第 2 号 は、産地軸でもう一歩。香味のルーツに寄り添うお菓子・食材を並べてみましょう。
エチオピア・ケニア系の 花・柑橘・ベリーは、レモンタルト/ベリーチーズケーキ/紅茶のパウンドケーキ/ハチミツ × チーズなどフルーティなスイーツと共鳴。
コロンビア・グアテマラ・ブラジル系の ナッツ・チョコ・バランスは、生チョコ/ブラウニー/くるみのスコーン/カフェオレなど王道の甘みと相性◎。
マンデリン・PNG・バリアラビカ系の スパイス・アーシー・厚みは、シナモンロール/ジンジャーケーキ/ココナッツ菓子/タピオカなどアジアンテイストと好相性。
味の印象は、驚くほどすぐに忘れてしまいます。「なぜ美味しかったのか」は、翌朝には曖昧になっている。人間の記憶の仕組みそのものです。
だから、記録します。豆の種類、産地、精製、焙煎度、そして 感じたこと一言。「ベリーが強い」「昨日の豆より重い」── そのくらい素朴な言葉で十分。
記録は、アプリにも残せます。数タップで、豆の種類・産地・精製・感じたことをまとめておけます。
記録アプリ Coffee Palette へ ↗