← 第 2 巻へ
II
Chapter Two
同じレシピで、
違いを聴く。

同じ淹れ方で、豆だけを変える。そうして浮かび上がるのが、産地と精製の個性。4 杯を並べ、舌と言葉を揃えていきましょう。

  1. 01飲み比べ ── 産地軸 × 精製軸
  2. 02フレーバーホイール
  3. 03味わいの 3 段階・酸味から探る
  4. 04ペアリング 産地別
  5. 05記録と振り返り
Tasting · 01 · Origin

飲み比べ①
産地で、比べる。

Compare by origin.
VIDEO
同じレシピで産地違いの 2 杯(豆 A: アフリカ / 豆 B: 中南米)を交互に飲み比べる手元のクローズアップ。カップを傾ける、すすって味わう所作。
4–5s ループ

同じレシピで、産地だけを変えて飲んでみる。今月お届けしたうち、豆 A(アフリカ系)豆 B(中南米系)を並べて淹れます。

Same Recipe · for Both Cups
粉量Coffee15g
湯量Water240ml
湯温Temp.93
変えるのは豆だけ

Expected Flavor · 予想される香味
  • 豆 A · アフリカ花・柑橘・紅茶・明るい酸
  • 豆 B · 中南米ナッツ・チョコ・バランス・厚み
Tip · 比較のコツ
2 杯を 交互に少しずつ飲む。片方を飲み切る前にもう片方を口に含むと、差分がくっきり立ち上がる。冷めてくる過程でも、味の記憶を確かめやすい。
— Tasting · Origin —
Tasting · 02 · Processing

飲み比べ②
精製で、比べる。

Compare by processing.
IMAGE
2x2 マトリクスで 4 杯を並べた俯瞰:左上 A(アフリカ × Washed)/ 右上 B(中南米 × Washed)/ 左下 C(アフリカ × Natural)/ 右下 D(中南米 × Natural)。液色の差が見える。

次は 同じ産地・違う精製。豆 C(アフリカ・ナチュラル)と豆 D(中南米・ナチュラル)を、豆 A/B と交差させて飲みます。

4 マスの比較マトリクス

A / C:アフリカ × Washed vs Natural
B / D:中南米 × Washed vs Natural

Washed はクリアな酸味と個性、Natural はベリー・フルーツの甘みが立ちやすい。同じ産地でも、精製が変われば別物の顔になる。


Blind Test · 目隠し実験

目をつぶって当ててみる。

誰かに 4 杯を並べてもらい、どれがどれかラベルなしで飲んでみる。スペシャルティ上級者でも正答率は 60% 前後。「わからなさ」も楽しみの一部です。

なぜ 4 杯か
産地 × 精製の 2 軸を掛け算すると、最小構成で 4 杯になる。2 変数を同時に操作せず、1 つずつ比較するのが、味覚を育てる近道。
— Tasting · Processing —
Flavor Wheel · 味の地図

フレーバーホイール、
味の地図。

The SCA Flavor Wheel.
IMAGE
SCA Flavor Wheel の見開き図解。中心から外環へ Fruity / Floral / Nutty-Cocoa などのカテゴリが放射状に展開する大型インフォグラフィック。

感じた香味を「ことば」に変える地図。中心から外に向かって、大分類 → 中分類 → 小分類と細かく分岐していきます。

SCA Coffee Taster's Flavor Wheel (JPN 2026)
使い方 · how to read

① まず中心の 大分類(Fruity / Floral / Nutty-Cocoa / Sweet / Sour-Fermented / Roasted / Green-Vegetative / Spices / Other)から選ぶ
② 次に隣の環(中分類)で絞る
③ 最後に外環(小分類)で、具体的な食材名に落とす

大切なのは 「正解を当てる」 ことではなく、「自分が今、何を感じたか」を言葉にすること。迷ったら「自分の知っている食べ物に近いもの」で OK。

Vol. 1 実践編では、ホイールを触って拡大できる見開きページをご用意しています。

画像提供:スペシャルティコーヒー協会 — Coffee Taster’s Flavor Wheel
sca.coffee/research/coffee-tasters-flavor-wheel
Licensed under CC BY-NC-ND 4.0

— Flavor Wheel —
Tasting Steps · 3 stages

味わいは、
3 段階で聴こえる。

Taste arrives in three stages.
VIDEO
一口含んで → 口の中で温度が変わる → 飲み込んだあと余韻が残る、という 3 段階の体験を時系列で表現するアニメーション。風味のフェードイン・展開・残響。
4–5s ループ

一杯のコーヒーの香味は、飲んでいる間に First → Flavor → Finish の 3 つのフェーズで姿を変えます。この順で追うと、感想がずっと言語化しやすくなります。

01
First Impression一口目口に含んだ 最初の 2 秒。華やか/重い/明るい/深い、といった全体像がここに。
02
Flavor Development香味の展開口の中で温度が変わるにつれ、酸味 → 甘み → 苦味 → テクスチャー が順に立ち上がる。
03
Finish · Aftertaste余韻飲み込んだあとに残る 長さきれいさ。良いコーヒーは、余韻が心地よく長い。
Tip · 冷めてからが本番
熱い間は苦味が強く出て、甘みや酸味が隠れます。50〜60℃まで冷めた頃にもう一口 ── 別のコーヒーのように変化します。完全に冷めた一杯で初めて正体が見える豆も多い。
— 3 Stages —
Sensory · start with acidity

まず、酸味から
探ってみる。

Start with acidity.
IMAGE
柑橘・ベリー・核果・リンゴ・ワインの 5 系統の果実をグループ分けで配置した俯瞰フラットレイ。コーヒーカップを中央に置く。

コーヒーの要素を一度に全部感じようとすると、頭がパンクします。おすすめは酸味から。酸味はもっとも記憶と結びつきやすく、果物の具体名で捉えやすい要素です。

Step 01 · 酸味の質を言葉に

柑橘系|オレンジ・レモン・グレープフルーツ・ベルガモット
ベリー系|いちご・ブルーベリー・ラズベリー・カシス
核果系|桃・杏・プラム・チェリー
リンゴ系|青リンゴ・完熟リンゴ・洋梨
ワイン系|赤ワイン・発酵果実

酸味がつかめたら、次は甘み → テクスチャー → コク → 余韻を順に。1 要素 1 杯で OK。焦らず、解像度を徐々に上げていきます。

Trivia · 味蕾の話

人間の舌には味蕾が 約 7,500 個、さらに上顎や喉の奥にも分布。味覚は訓練で解像度が 最大 3 倍ほど向上するとも言われる。

— Acidity —
Pairing · by origin

産地で、合わせる。

Pairings by origin.
IMAGE
3 産地(Africa / Latin America / Asia-Pacific)ごとに、コーヒーと相性の良いお菓子(ベリーケーキ / 生チョコ / シナモンロール)が並ぶペアリングテーブル。

Vol. 1 では「焙煎度」でペアリングを考えました。Vol. 2 は、産地軸でもう一歩。香味のルーツに寄り添うお菓子・食材を並べてみましょう。

Africa× フルーツ・紅茶・蜂蜜

エチオピア・ケニア系の 花・柑橘・ベリーは、レモンタルト/ベリーチーズケーキ/紅茶のパウンドケーキ/ハチミツ × チーズなどフルーティなスイーツと共鳴。

Latin America× チョコ・ナッツ・ミルク

コロンビア・グアテマラ・ブラジル系の ナッツ・チョコ・バランスは、生チョコ/ブラウニー/くるみのスコーン/カフェオレなど王道の甘みと相性◎。

Asia / Pacific× スパイス・乳・アジアン菓子

マンデリン・PNG・バリアラビカ系の スパイス・アーシー・厚みは、シナモンロール/ジンジャーケーキ/ココナッツ菓子/タピオカなどアジアンテイストと好相性。

Tip · 精製で変えるなら
Washedは 「クリアに補う」 → お菓子の甘みが主役Naturalは 「香りを足す」 → お菓子はシンプルな方が◎(バターサブレ、プレーンスコーンなど)。
— Pairing · Origin —
Comparison · 4-cup matrix

4 杯の記録を、
横に並べる。

Line up the four cups.
IMAGE
4 杯のコーヒーが横一列、その下にテイスティングシート(産地・精製・香り・酸・甘・ボディ・好き度のスコア表)が広がる俯瞰。

4 杯それぞれの記録が揃ったら、表のように横並びにしてみましょう。産地別・精製別・好き度 ── この 3 軸で俯瞰すると、自分の好みの傾向が浮かび上がります。

比較シートの作り方

縦軸|A(Afr × W)/B(LA × W)/C(Afr × N)/D(LA × N)
横軸|香り・酸味・甘み・ボディ・余韻・好き度

各項目を 1〜5 の 5 段階で記入。数字より、「記憶したキーワード」を書き添えるのが、後で見返す楽しみに。


Discover · 気づきの型

きっと見つかる、3 つの傾向。

  • 「産地派」 の人同じ産地の W/N どちらも好き
  • 「精製派」 の人産地問わず Washed or Natural が好き
  • 「ピンポイント派」1 杯だけが突出して好き

どの傾向も「正解」です。あなたの傾向がわかった瞬間、次にお店で豆を選ぶとき、迷わなくなります。

— Compare —
Essay by Sho Sakamoto

最初は、深煎りしか
飲めなかった。

I couldn’t drink anything but dark roast.
IMAGE
坂本さんが過去を振り返る静かなショット。深煎りの一杯と、後に出会ったエチオピア・イルガチェフェ ナチュラルの一杯が並ぶ対比写真。

今でこそ浅煎りの花のような香りが大好きですが、コーヒーを学び始めた頃の僕は、深煎りしか受けつけなかった

浅煎りを「すっぱい・コーヒーじゃない」と感じていた時期が、長くありました。深くてビターで、苦味の向こうにカラメルの甘さがある ── それが 「コーヒー」 の像として、舌の中に固定されていた。

転機は、あるロースターで出された エチオピア・イルガチェフェのナチュラル冷めかけた一杯を一口含んだ瞬間、「これ、コーヒー?」と声が漏れた。ジャスミンと桃とオレンジとベリーが同居していた。

あの日から僕の味覚は、一段ずつ開いていった。浅煎りの方向に広がり、やがて中煎りの甘さ、深煎りの複雑さも、それぞれ別の魅力として聴けるようになった。

味覚は変わります。変わっていい。今の「好き」を否定する必要はなく、次の「好き」を怖がらずに迎える── それだけで、コーヒーという飲み物は、一生の友人になってくれます。

── 坂本 翔 / Sho Sakamoto
— Essay —
Chapter III · Record

4 杯を、
記録に残そう。

Record all four cups.
VIDEO
スマホで Beans. App を開き、4 杯の記録を 1 杯ずつタップで残していく手元の操作映像。記録完了後、3 ヶ月の進捗グラフが現れる。
4–5s ループ

味の印象は、驚くほどすぐに忘れてしまいます。「なぜ美味しかったのか」は、翌朝には曖昧になっている。人間の記憶の仕組みそのものです。

だから、記録します。豆の種類、産地、精製、焙煎度、そして 感じたこと一言。「ベリーが強い」「昨日の豆より重い」── そのくらい素朴な言葉で十分。

記録は、Beans. App に任せられます。QR を読み込んで、4 杯を数タップで残すだけ。3 ヶ月の変化グラフにしてくれます。

Beans. Appアプリを開く
1アプリを開く
2「第 2 回 違いがわかる」を選ぶ
34 杯それぞれを記録する
Trivia · 忘却曲線
エビングハウスの研究では、人は学習直後から 20 分で 42%、1 時間で 56%、1 日で 67% を忘却する。味の印象は言語より失われやすく、記録なしで翌朝まで覚えていられる細部はごく僅か。
— Record —
About · Beans. Coffee School

Beans. について。

A school in a subscription box.
Beans. Coffee&Roasters
Beans. ロゴ

Beans. Coffee School は、毎月 1 回、教材と旬の豆が届く定期便型のスクール。自宅にいながら、3 ヶ月で 「自分の一杯」 に出会うプログラムです。

Information

Address
(所在地・4/24 打ち合わせで確定)

Instagram
@beans.coffee.school(仮)

Web
beans-coffee-school.pages.dev

Mail
hello@beans.coffee.school(仮)

最新の一杯を、Instagram で見せてもらえたら嬉しいです。
#BeansCoffeeSchool

— Beans. —
Next Volume · Vol. 3 Preview

次回 ──
自分の一杯を見つける。

Next: Find your cup.
VIDEO
Vol.3 の予告映像。焙煎機の窓越しに豆が転がる、3 段階の焙煎度の豆が並ぶ、最後に『自分のレシピ』を書き込むノート。次章への予感を喚起。
4–5s ループ

産地と精製で、味がこんなに変わる。それを知ったあなたが、最終章で出会うのが 焙煎度という 3 つ目の変数。

第 3 回は、焙煎・水・器具を掘り下げ、自分だけのレシピカードにまとめていきます。3 ヶ月の旅の、いちばん主観的で、いちばん楽しい章。

第3回予告
Vol. 3 Preview
自分の一杯を見つける
Roast × Water × Gear

— End of Vol. 2 —

Next Volume
次は、
Vol. 2 実践編 豆知識 — マニアと味覚の深み
Vol. 2 実践編 豆知識 — マニアと味覚の深み を開く → トップへ戻る