Beans. School
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I
Chapter One
まず、淹れてみよう。

座学の前に、手を動かす。基本レシピと 11 ステップで一杯を完成させる。淹れたてのコーヒーを片手に、この先を読み進めましょう。

  1. 01基本レシピ/ハンドドリップ一本
  2. 02抽出 3 タイプ/道具の素材/水とカップ
  3. 03ハンドドリップ 11 ステップ
  4. 04☕ コーヒー片手に、この先を
Chapter I · 01

はじめての1杯、淹れてみよう。

Let’s brew your first cup.

レシピは、驚くほどシンプルです。粉 15g、湯 240ml、湯温 93℃4 回に分けて注ぐ。守るのはこれだけ。抽出時間は 2 分 30 秒ほど。

このレシピは、監修の坂本が試行錯誤を重ねて辿り着いた比率です。家のキッチンで誰でも・毎回同じ味を再現できることを最優先に設計した 1:16・93℃・4 投。プロのような派手なテクニックは要りません。

まずは 1 回目は動画を観るだけ2 回目は動画を止めずにやってみる3 回目からは自分のリズムで

通しで観られる完全版。各 STEP のページでは、この動画の該当シーンだけを 3〜5 秒ループで埋め込んでいます。

Basic Recipe · Hand Drip for One
粉量Coffee15g
湯量Water240ml
湯温Temp.93
蒸らしBloom30sec
注湯Pours4×60ml
抽出時間の目安approx. 2:30
Trivia · Golden Cup
SCA 公式「Golden Cup Standard」は粉 55g / 湯 1L(1:18.2)、湯温 90.5〜96.1℃、抽出時間 4〜6 分。TDS(溶解固形分)1.15〜1.35%、抽出収率 18〜22%の範囲が「理想の一杯」とされる。
— 21–22 —
ちなみに · Hand Drip

ちなみに、
淹れ方はたくさんあります。

Many ways to brew — we chose one.

コーヒーの淹れ方は、世界中に多様にあります。この講座では、その中でも最もオーソドックスなハンドドリップに絞って進めます。

① 家庭で最も普及していて続けやすい。道具は揃えやすく、場所もとらず、毎日でも淹れられます。

② 「変数の扱い方」が学べる。挽き目・湯温・注ぎ方・時間 ── この 4 つをコントロールする技は、他のどの淹れ方にも応用できる土台になります。

③ 豆の個性がもっとも素直に出る。ペーパーフィルターが油分と微粉を吸着し、豆の香り・酸味・甘み・後味が澄んで出てきます。

世界の淹れ方、ざっくり一覧。

  • ハンドドリップペーパーで湯を通す◉ 本講座
  • エスプレッソ9 気圧・短時間。濃厚・クレマ
  • フレンチプレス粉を浸して金属フィルター
  • サイフォン気圧差で湯が動く、視覚的
  • エアロプレス浸漬+加圧、短時間
  • コールドブリュー水で 8〜12h、まろやか
— 23–24 —
ちなみに · Methods

ちなみに、
抽出には 3 つのタイプがあります。

Three ways to brew — we use the first.

科学的な観点では、淹れ方は大きく 透過法・浸漬法・加圧法の 3 つに分かれます。今回この教材で扱うハンドドリップは、透過法です。澄んだ仕上がりで、豆の個性がもっとも素直に出ます。

透過法のハンドドリップFilter透過法
ペーパードリップネル本講座

粉に湯を通過させる。紙が油分と微粉を吸着し、澄んだクリーンな仕上がり

浸漬法のフレンチプレスImmerse浸漬法
フレンチプレスサイフォン

粉を湯に浸す。油分も残り コク・厚み・再現性に優れる。

加圧法のエスプレッソPressure加圧法
エスプレッソエアロプレス

9 気圧で 20〜30 秒。クレマが立ち、成分が凝縮。


Material · 素材で味が変わる

ドリッパー、素材の差。

ドリッパーは素材で味が変わります。鍵は熱容量と熱伝導率。初めての 1 本は プラスチック製の HARIO V60が安定。

  • 陶器温まりにくい/冷めにくい・要予熱
  • プラスチック熱を奪わない・軽・安・プロ愛用
  • ガラス中間・見た目◎・衝撃に注意
  • 金属(銅/ステンレス)熱伝導◎・風味ふくらむ
なぜ素材で味が変わる?
抽出中、湯はドリッパー壁に熱を奪われ続けます。プラスチックはほぼ熱を奪わないので、湯の温度そのままで抽出できる。プロが愛用する理由はここに。
— Methods & Material —
Chapter I · Water

コーヒーの 99% は、水です。

99% of coffee is water.

コーヒーは液体としてみれば約 99%(重量比)が水です。まずは軟水を用意しましょう。日本の水道水はほとんどが軟水なので、浄水器を通した水道水でも十分です。

ミネラルウォーターを使う場合は、ラベルに「軟水」と書かれた一般的なものを選べば OK です。硬水はミネラルが多く、苦味や重さが出やすいので、最初の一杯では避けましょう。

Tip · カルキ臭は飛ばせる
沸騰でカルキ臭はある程度飛ばせます。長時間沸騰させると味が平坦になりやすいので、沸騰したら少し冷まして使いましょう。
— Water & Cups —
Checkpoint

では、準備はOKですか?

豆・ミル・ドリッパー・フィルター・ケトル・スケール・サーバー・カップ。
軟水も用意できましたか?

ここから先は、実際に手を動かしていきます。

Step 01 · Measure
Measure. 15g on the scale.
Prep · 01 / 11

豆を袋から出して量ります。

Measure the beans.

最初のハードルが、豆の量。1g の違いで抽出濃度は 1% 以上変動します。計量スプーンだけだと ±2〜3g のブレは普通。最初のうちは、しっかり量りで計量することを習慣にしましょう。

中煎り・深煎りは 15g、浅煎りは 15.5〜16.5g。焙煎が深いほど豆の水分が飛んで軽くなるため、浅煎りは 1g ほど多めに。

豆の量15g
浅煎り+1g
スケール0.1g単位

Tip · 動画 0:08〜 スプーン山盛り 1 杯で約 12g、すり切りで約 10gが目安。ただし豆のサイズで大きくブレるので、スケール計量は習慣化を推奨。3 回やれば 10 秒で終わる作業に。

初めての方へ
「カップの目盛りは 1 杯・2 杯 なのに、レシピは 15g?」── わかります、最初はそこで戸惑いますよね。大丈夫、量りに豆を載せて 15g。これだけ覚えればOKです。慣れれば 10 秒で終わる作業になります。
— 29–30 —
Step 02 · Grind
Grind. Unlock the aroma.
Prep · 02 / 11

コーヒー豆を挽きましょう。

Grind just before brewing.

豆を粉にするタイミングは、淹れる直前が鉄則。挽いた瞬間に表面積が数百倍に広がり、香り成分が爆発的に揮発し始めます。15 分放置で香りの 30% 以上が失われるという研究も。

ペーパードリップの標準は中細挽き〜中挽き。砂より少し粗く、グラニュー糖より細かいくらい。動画では自動ミルを使っていますが、手動ミルなら挽き目の調整ができるのが利点です。下にある画像を参考に挽いてみてください。何回かやり直してもOKです。

挽き目中挽き
手動ミル15–20
目安時間30

Reference · Grind

挽き目、5 段階。

Five grind sizes at a glance.

「中挽き」と言われても、最初はどの粗さが正解か分からない。粉の見た目で粒度を確認できる目安表です。

粗挽き
粗挽きCoarse

ザラメ糖ほど。フレンチプレス向き

中粗挽き
中粗挽きMedium-Coarse

酸味・甘み・コクのバランスがとりやすく、軽やかに。

中挽き
中挽きMedium

グラニュー糖ほど。もっとも標準的◉ ペーパードリップ標準

中細挽き
中細挽きMedium-Fine

サラサラ。ペーパードリップでコクを出したい時。

極細挽き
極細挽きExtra-Fine

小麦粉に近い。エスプレッソ向け

変数は 1 つずつ 挽き目・湯温・蒸らし時間 ── 複数を一度に変えると、何が効いたか分からなくなる。1 回の抽出で 1 つだけ動かすのが上達の近道。

— 31–34 —
Step 03 · Water
Water. 93°C, quietly.
Prep · 03 / 11

お湯を93度で準備しましょう。

Heat the water to 93°C.

理想の湯温は 90〜93℃。沸騰させた湯をケトルに移し、1〜2 分そのまま置くだけで、ちょうどこの温度域に着地します。

高すぎる湯温(95℃〜)は苦味と雑味、低すぎる湯温(85℃以下)は成分が引き出されず薄く。湯温 1℃ の差で、味の印象が変わります。

ケトルは細口(グースネック)が断然使いやすい。湯の流量を指先でコントロールできます。

Temp.93
Wait1–2min
KettleGooseneck

Tip · 動画 0:36〜 沸騰から 1 分待つだけで、97℃ → 92℃あたりまで自然に下がる。温度計なしでも再現可能。

— 35–36 —
Step 04 · Filter
Filter. Fold, fit, ready.
Prep · 04 / 11

フィルターを準備しましょう。

Fold the paper filter.

ペーパーフィルターは、縦と底の接着部を互い違いに折って、ドリッパーの形に沿わせます。縦を手前、底を奥、という順。

折り終えたフィルターをドリッパーに入れたら、指で内側を軽く押さえ、円錐の面に沿わせる。ここが浮いていると、お湯が紙の外を伝って落ち(チャネリング)、味が薄まります。

FoldAlt.
FitSnug
TypeV60 01

Tip · 動画 0:41〜 覚え方は「縦 → 手前、底 → 奥」。1 回覚えれば一生忘れません。

— 37–38 —
Step 05 · Rinse
Rinse. Paper taste, gone.
Prep · 05 / 11

まずは湯通し。

Rinse and warm.

セットしたフィルターに、湯をゆっくり回しかけて紙全体を濡らします。目的は 2 つ。① 紙の匂いを落とす、② ドリッパーとサーバーを予熱する

注いだ湯はそのままサーバーに落とし、サーバーからカップに移し、カップも温めてから捨てます。一気に 3 カ所を温めると、抽出温度の安定が段違いに変わります。

かける時間10
温める場所3
初めての方へ
10 秒かけて、紙全体にお湯を回してください。一見地味な工程ですが、紙の匂いを落とし、器具を温める大切な準備です。慣れた人ほど、この 10 秒を丁寧に行います。
— 39–40 —
Step 06 · Set
Set. Level the grounds.
Prep · 06 / 11

粉をセット。

Place and level the grounds.

温まったドリッパーに、挽きたての粉を投入。このとき、粉の表面を水平にならすのが意外なコツ。ドリッパーを軽く揺するか、指で縁を叩くと自然に平らに。

表面が斜めだと、注湯時に湯が低い方に流れてしまい、一部は過抽出、一部は未抽出という不均一な味に。

Grounds15g
LevelFlat
Tap

Tip · 動画 1:02〜 粉をドリッパーに入れたら、軽くトントンと 3 回ほど側面を叩く。これだけで表面が水平になり、抽出ムラが減ります。

— 41–42 —
Checkpoint · Prep Done

準備完了。ここから、抽出。

量る・挽く・湯を沸かす・フィルターを折る・湯通し・粉をセット。6 つの準備が整いました。

タイマー(スマホでOK)を手元に用意してください。ここからは 4 回に分けてお湯を注ぎます。

Step 07 · 1st Pour
1st pour. Bloom & stir.
Brew · 07 / 11

1 投目 — 注湯と攪拌(かくはん)

First pour: bloom and stir.

0:00〜0:05 — タイマースタートと同時に、60ml のお湯を約 5 秒かけて粉全体に注ぎます。中心から外側へ。

0:05〜0:10 — 注湯後すぐに、スプーンで粉を下から上に持ち上げるイメージで 3 回ほど攪拌(かくはん)します。「攪拌」とは、粉とお湯を均一に混ぜること。粉とお湯を均一に混ぜ、全粒から同時に抽出をスタートさせます。

0:10〜0:35約 30 秒の蒸らし。粉に含まれる CO₂ を逃がし、湯が粉全体に浸透しやすくするための時間です。何もせず待ちます。モコモコと膨らむ泡は、焙煎から 1〜2 週間の新鮮な豆のサインです。

Time0:00
Pour60ml
Bloom30sec

Tip · 動画 1:30〜 攪拌は 2014 年頃から一部の有名バリスタが取り入れ、広がった技法。家庭で安定した味を出すなら「する派」が有利

— 43–44 —
Step 08 · 2nd Pour
2nd pour. The 「の」 stroke.
Brew · 08 / 11

2 投目。

「の」 stroke, from the center.

0:35〜0:50 — 蒸らしが終わったら、すぐ 2 投目。約 15 秒かけて 60ml を注ぎます。累計 120ml

ドリッパーの中心を起点に、「の」の字を描くように細く注ぎます。中心から外へ、また中心へ戻る連続した動きで、粉のドームを崩さず均一に。

注ぐ範囲は、500 円玉くらいの円の内側。外周に直接かかると「チャネリング」が起きて、味が薄まります。

「の」の字
Time0:35
Pour+60ml
Total120ml
初めての方へ
「『の』の字なんて、そんなに綺麗に書けない…」── 初めての人はみんな同じ気持ち。プロのような完璧な形でなくても、中心から外へ、外から中心へ── その往復運動さえ守れば、形は自由。
— 45–46 —
Step 09 · 3rd Pour
3rd pour. Build the body.
Brew · 09 / 11

3 投目。

Build the body.

1:15〜1:30約 15 秒かけて 60ml を注ぎます。累計 180ml。ここからは味の中核部分。コーヒーの「コク」「甘み」「厚み」が出てくる時間帯です。

注ぎ方は 2 投目と同じ「の」の字。少しだけ太く、テンポよく。

上面の泡は白→ベージュ→薄茶と色が変わっていきます。ベージュ〜薄茶になったら抽出の後半に入った合図。

Time1:15
Pour+60ml
Total180ml

Tip · 動画 2:21〜 3 投目は「味の中核」。1 投目で抽出スタート、2 投目で量、3 投目でコクと厚み。注ぐペースで味の骨格が決まる、いちばん重要な注湯。

— 47–48 —
Step 10 · 4th Pour
4th pour. The final 60.
Brew · 10 / 11

4 投目。

The final touch.

1:55〜2:10 — 最後の 4 投目。約 15 秒かけて 60ml を注ぎます。累計 240ml、最終目標に到達です。

最後の注ぎは軽く・スッと。味の輪郭を整える役目。ここで過度に注ぎすぎると、後半の薄い成分が多く入り、味がぼやける原因に。

注ぎ終わったら、ドリッパーの中のお湯が自然に落ちきるのを待ちます。30〜40 秒。何もせずに見守るのが正解。

Time1:55
Pour+60ml
Total240ml
初めての方へ
初日は「自分の知っているコーヒーとは、落ち方も味も違う気がする」── そんな曖昧な感触を抱きます。そのどちらとも言えない感覚こそ、始まりの味。記録を残せば、3 ヶ月後に振り返れる旅に変わります。
— 49–50 —
Step 11 · Finish
Finish. Serve warm.
Finish · 11 / 11

抽出後の、仕上げ。

After the pour — the final craft.

お湯が落ち切ったら、いよいよ仕上げ。意外とやることが多いのです。

① ドリッパーを外す ── 完全に落ち切ったら即。「最後の数滴を落とさない」派も正解。

② サーバー内の濃度差をならす ── 上が薄く下が濃い。スプーンで軽くかき混ぜるか、軽くゆする。

③ カップを予熱する ── 冷たいカップに注ぐと一口目で温度が 5〜8℃ 下がる。

④ 香りを嗅ぐ ── カップを鼻に近づけ、立ち上る香りを 2〜3 秒。

⑤ 温度変化で味が変わる ── 65℃ では香り55℃ で甘み45℃ で酸。1 杯の中で複数の表情を楽しめます。

Drip2:30–3:00
SwirlGentle
ServeWarm
初めての方へ
初日と 2 日目で、味の感じ方が驚くほど違うことがあります。「あ、これ美味しいかも。ちょっとココアみたいな甘さ?」── 言葉にできない一瞬の発見は、試行錯誤の先にだけ訪れる贈り物です。完璧を求めすぎず、今日の一杯を味わってください。
— 51–52 —
Review

いかがでしたか?
うまく淹れられましたか?

初めてなら、うまくいかなくて当然です。
もう一度やってみるのも、コーヒーを飲みながら先に進むのも、どちらも正解。

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