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II
Chapter Two
素材を、あなたの手で確かめる。

基本レシピ・道具の素材・水・カップ。11 ステップで一杯を完成させたあと、変数を自分で動かしてみる。淹れ手が操作できる味の幅を、この 1 ヶ月で掴みます。

  1. 01基本レシピ/抽出 3 タイプ/水とカップ
  2. 02ハンドドリップ 11 ステップ
  3. 03保存・ペアリング・トラブル・お手入れ
  4. 04変数実験 ── 挽き目・湯温・注ぎ方
  5. 05一口目・記録・次巻予告
Chapter II · 01

はじめての1杯、
淹れてみよう。

Let’s brew your first cup.

レシピは、驚くほどシンプルです。粉 15g、湯 240ml、湯温 93℃4 回に分けて注ぐ。守るのはこれだけ。抽出時間は 2 分 30 秒ほど。

このレシピは、坂本さんが数え切れないほど試行錯誤を重ねて辿り着いた「家庭で再現できる、失敗しにくい黄金比」。最初は 1:13(粉 18g/湯 234ml) で濃く淹れたり、湯温 96℃ でキレを出そうとしたり、回り道をたくさん。最終的に「家のキッチンで誰でも・毎回同じ味」に落ち着いたのが、1:16・93℃・4 投のいまの形。プロのような派手なテクニックは要りません。

まずは 1 回目は動画を観るだけ2 回目は動画を止めずにやってみる3 回目からは自分のリズムで。これが、このスクールの歩み方です。

基本の一杯・通し動画
5/15 公開予定

通しで観られる完全版。各 STEP のページでは、この動画の該当シーンだけを 3〜5 秒ループで埋め込んでいます。

Basic Recipe · Hand Drip for One
粉量Coffee15g
湯量Water240ml
湯温Temp.93
蒸らしBloom40sec
注湯Pours4×60ml
抽出時間の目安approx. 2:30
Trivia · Golden Cup
SCA 公式「Golden Cup Standard」は粉 55g / 湯 1L(1:18.2)、湯温 90.5〜96.1℃、抽出時間 4〜6 分。TDS(溶解固形分)1.15〜1.35%、抽出収率 18〜22%の範囲が「理想の一杯」とされる。
— 21–22 —
Focus · Hand Drip

この講座は、
ハンドドリップ一本。

We focus on hand drip, deeply.

コーヒーの淹れ方は、世界中に多様にあります。この 3 ヶ月の講座では ハンドドリップ一本に絞ります。理由は 3 つ。

① 家庭で最も普及していて続けやすい。道具は揃えやすく、場所もとらず、毎日でも淹れられます。

② 「変数の扱い方」が学べる。挽き目・湯温・注ぎ方・時間 ── この 4 つをコントロールする技は、他のどの淹れ方にも応用できる土台に。

③ 豆の個性がもっとも素直に出る。ペーパーフィルターが油分と微粉を吸着し、豆の香り・酸味・甘み・後味が澄んで出てきます。

ハンドドリップは、コーヒーの淹れ方の「母語」のような存在です。

世界の淹れ方、ざっくり一覧。

  • ハンドドリップペーパーで湯を通す◉ 本講座
  • エスプレッソ9 気圧・短時間。濃厚・クレマ
  • フレンチプレス粉を浸して金属フィルター
  • サイフォン気圧差で湯が動く、視覚的
  • エアロプレス浸漬+加圧、短時間
  • コールドブリュー水で 8〜12h、まろやか
  • トルコ式極細粉ごと煮出し、沈澱
  • ベトナム式金属+練乳で甘く濃厚
— 23–24 —
Chapter II · Methods

淹れ方は、3 つのタイプ。

Three ways to brew.

科学的な観点では、淹れ方は大きく 透過法・浸漬法・加圧法の 3 つ。ハンドドリップは 透過法の王道。澄んだ仕上がりで、豆の個性がもっとも素直に出ます。

Filter透過法
ペーパードリップネル本講座

粉に湯を通過させる。紙が油分と微粉を吸着し、澄んだクリーンな仕上がり

Immerse浸漬法
フレンチプレスサイフォン

粉を湯に浸す。油分も残り コク・厚み・再現性に優れる。

Pressure加圧法
エスプレッソエアロプレス

9 気圧で 20〜30 秒。クレマが立ち、成分が凝縮。


Material · 素材で味が変わる

ドリッパー、素材の差。

ドリッパーは素材で味が変わります。鍵は熱容量と熱伝導率。初めての 1 本は プラスチック製の HARIO V60が安定。

  • 陶器温まりにくい/冷めにくい・要予熱
  • プラスチック熱を奪わない・軽・安・プロ愛用
  • ガラス中間・見た目◎・衝撃に注意
  • 金属(銅/ステンレス)熱伝導◎・風味ふくらむ
なぜ素材で味が変わる?
抽出中、湯はドリッパー壁に熱を奪われ続けます。プラスチックはほぼ熱を奪わないので、湯の温度そのままで抽出できる。プロが愛用する理由はここに。
— Methods & Material —
Chapter II · Water

コーヒーの 99% は、水です。

99% of coffee is water.

コーヒーは液体としてみれば約 99%(重量比)が水。日本の水道水はほぼ軟水寄りで、蛇口からすでに理想に近い条件が出ています。

軟水〜100 mg/L
日本の水バランス◎

関東約 60mg/L、関西 40〜80mg/L。世界的にもコーヒーに理想的。酸味と甘みが素直に出る

中硬水101〜300
少し重め

ミネラルの影響でコクとボディが強調される。深煎りと相性が良い。

硬水301〜
過抽出気味

ミネラル豊富で過抽出の苦味になりやすい。コーヒー用としては非推奨。

Tip · カルキ臭は飛ばせる
沸騰でカルキ臭は飛びます。浄水器は不要。長時間沸騰だと溶存酸素が減り味が平坦になるので、沸騰したらすぐ使う。

Cups · 器が、味を決める

カップで、
味の感じ方が変わる。

同じコーヒーでも、飲み口の厚さ・形・素材で印象は変わります。浅煎り → 広口薄口、深煎り → 直線厚口が相性◎。

  • 薄口・広め浅煎り向け・香りが鼻に抜ける
  • 厚口・直線深煎り向け・コクを感じやすい
  • 白磁・中厚万能・色が観察しやすい

気に入ったら同じカップを 2 個買うのがおすすめ。飲み比べにも、来客時にも。

— Water & Cups —
Step 01 · Measure
Measure. 15g on the scale.
Prep · 01 / 11

量る。

Measure the beans.

最初のハードルが、豆の量。1g の違いで抽出濃度は 1% 以上変動します。計量スプーンだけだと ±2〜3g のブレは普通。

中煎り・深煎りは 15g、浅煎りは 15.5〜16.5g。焙煎が深いほど豆の水分が飛んで軽くなるため、浅煎りは 1g ほど多めに。

Beans15g
Light++1g
Scale0.1g

Tip · 動画 0:08〜 スプーン山盛り 1 杯で約 12g、すり切りで約 10gが目安。ただし豆のサイズで大きくブレるので、スケール計量は習慣化を推奨。3 回やれば 10 秒で終わる作業に。

初めての方へ
最初の関門は、豆の「1 人分」。カップの目盛りは 1 杯・2 杯 と書かれているのに、レシピは 15g。そっと開けた瞬間に立ち上る挽かれる前の豆の深い香りが、戸惑いを迎え入れてくれる。
— 29–30 —
Step 02 · Grind
Grind. Unlock the aroma.
Prep · 02 / 11

挽く。

Grind just before brewing.

豆を粉にするタイミングは、淹れる直前が鉄則。挽いた瞬間に表面積が数百倍に広がり、香り成分が爆発的に揮発し始めます。15 分放置で香りの 30% 以上が失われるという研究も。

ペーパードリップの標準は中細挽き〜中挽き。砂より少し粗く、グラニュー糖より細かいくらい。手挽きミルなら15〜20 回転

GrindMedium
Turns15–20
Time30sec

Reference · Grind

挽き目、5 段階。

Five grind sizes at a glance.

「中挽き」と言われても、最初はどの粗さが正解か分からない。粉の見た目で粒度を確認できる目安表です。

粗挽き
粗挽きCoarse

ザラメ糖ほど。フレンチプレス向き

中粗挽き
中粗挽きMedium-Coarse

酸味・甘み・コクのバランスがとりやすく、軽やかに。

中挽き
中挽きMedium

グラニュー糖ほど。もっとも標準的◉ ペーパードリップ標準

中細挽き
中細挽きMedium-Fine

サラサラ。ペーパードリップでコクを出したい時。

極細挽き
極細挽きExtra-Fine

小麦粉に近い。エスプレッソ向け

変数は 1 つずつ 挽き目・湯温・蒸らし時間 ── 複数を一度に変えると、何が効いたか分からなくなる。1 回の抽出で 1 つだけ動かすのが上達の近道。

— 31–34 —
Step 03 · Water
Water. 93°C, quietly.
Prep · 03 / 11

お湯の準備。

Heat the water.

理想の湯温は 90〜93℃。沸騰させた湯をケトルに移し、1〜2 分そのまま置くだけで、ちょうどこの温度域に着地します。

高すぎる湯温(95℃〜)は苦味と雑味、低すぎる湯温(85℃以下)は成分が引き出されず薄く。湯温 1℃ の差で、味の印象が変わります。

ケトルは細口(グースネック)が断然使いやすい。湯の流量を指先でコントロールできます。

Temp.93
Wait1–2min
KettleGooseneck

Tip · 動画 0:36〜 沸騰から 1 分待つだけで、97℃ → 92℃あたりまで自然に下がる。温度計なしでも再現可能。

— 35–36 —
Step 04 · Filter
Filter. Fold, fit, ready.
Prep · 04 / 11

フィルターの準備。

Fold the paper filter.

ペーパーフィルターは、縦と底の接着部を互い違いに折って、ドリッパーの形に沿わせます。縦を手前、底を奥、という順。

折り終えたフィルターをドリッパーに入れたら、指で内側を軽く押さえ、円錐の面に沿わせる。ここが浮いていると、お湯が紙の外を伝って落ち(チャネリング)、味が薄まります。

FoldAlt.
FitSnug
TypeV60 01

Tip · 動画 0:41〜 覚え方は「縦 → 手前、底 → 奥」。1 回覚えれば一生忘れません。

— 37–38 —
Step 05 · Rinse
Rinse. Paper taste, gone.
Prep · 05 / 11

湯通し。

Rinse and warm.

セットしたフィルターに、湯をゆっくり回しかけて紙全体を濡らします。目的は 2 つ。① 紙の匂いを落とす、② ドリッパーとサーバーを予熱する

注いだ湯はそのままサーバーに落とし、サーバーからカップに移し、カップも温めてから捨てます。一気に 3 カ所を温めると、抽出温度の安定が段違い。

FlowGentle
Time10sec
Warm×3
初めての方へ
10 秒もかからない、一見地味な工程。けれどこの 待つ・温める という所作の中にこそ、ハンドドリップの哲学が凝縮されている。時間を買うのではなく、時間を作る。慣れた人ほど、この 10 秒を丁寧にやります。
— 39–40 —
Step 06 · Set
Set. Level the grounds.
Prep · 06 / 11

粉をセット。

Place and level the grounds.

温まったドリッパーに、挽きたての粉を投入。このとき、粉の表面を水平にならすのが意外なコツ。ドリッパーを軽く揺するか、指で縁を叩くと自然に平らに。

表面が斜めだと、注湯時に湯が低い方に流れてしまい、一部は過抽出、一部は未抽出という不均一な味に。

Grounds15g
LevelFlat
Tap

Tip · 動画 1:02〜 粉をドリッパーに入れたら、軽くトントンと 3 回ほど側面を叩く。これだけで表面が水平になり、抽出ムラが減ります。

— 41–42 —
Step 07 · 1st Pour
1st pour. Bloom & stir.
Brew · 07 / 11

1 投目 — 注湯と攪拌。

First pour: bloom and stir.

ついに抽出開始。タイマー 0:00 スタート、60ml のお湯を粉全体に注ぎます。注ぐ位置は中心から外側へ。

注湯後すぐに、スプーンで粉を下から上に持ち上げるイメージで 3 回ほど攪拌。ハンドドリップの「隠し技」。粉とお湯を均一に混ぜ、全粒から同時に抽出をスタートさせます。

攪拌後は30〜35 秒の蒸らしモコモコと膨らむ泡は、焙煎から 1〜2 週間の新鮮な豆のサイン。

Time0:00
Pour60ml
Bloom30sec

Tip · 動画 1:30〜 攪拌は 2014 年頃から一部の有名バリスタが取り入れ、広がった技法。家庭で安定した味を出すなら「する派」が有利

— 43–44 —
Step 08 · 2nd Pour
2nd pour. The 「の」 stroke.
Brew · 08 / 11

2 投目。

「の」 stroke, from the center.

蒸らしが 30〜35 秒経ったら、すぐ 2 投目。タイマー 0:35〜0:40、累計 120ml(+60ml)。

ドリッパーの中心を起点に、「の」の字を描くように細く注ぎます。中心から外へ、また中心へ戻る連続した動きで、粉のドームを崩さず均一に。

注ぐ範囲は、500 円玉くらいの円の内側。外周に直接かかると「チャネリング」が起きて、味が薄まります。

Time0:35
Pour+60ml
Total120ml
初めての方へ
「『の』の字なんて、そんなに綺麗に書けない…」── 初めての人はみんな同じ気持ち。プロのような完璧な形でなくても、中心から外へ、外から中心へ── その往復運動さえ守れば、形は自由。
— 45–46 —
Step 09 · 3rd Pour
3rd pour. Build the body.
Brew · 09 / 11

3 投目。

Build the body.

タイマー 1:15〜1:20で 3 投目。累計 180ml(+60ml)。ここからは味の中核部分。コーヒーの「コク」「甘み」「厚み」が出てくる時間帯。

注ぎ方は 2 投目と同じ「の」の字。少しだけ太く、テンポよく。

上面の泡は白→ベージュ→薄茶と色が変わっていきます。ベージュ〜薄茶になったら抽出の後半に入った合図。

Time1:15
Pour+60ml
Total180ml

Tip · 動画 2:21〜 3 投目は「味の中核」。1 投目で抽出スタート、2 投目で量、3 投目でコクと厚み。注ぐペースで味の骨格が決まる、いちばん重要な注湯。

— 47–48 —
Step 10 · 4th Pour
4th pour. The final 60.
Brew · 10 / 11

4 投目。

The final touch.

タイマー 1:55〜2:00で最後の 4 投目。累計 240ml(+60ml)、最終目標に到達。

最後の注ぎは軽く・スッと。味の輪郭を整える役目。ここで過度に注ぎすぎると、後半の薄い成分が多く入り、味がぼやける原因に。

注ぎ終わったら、ドリッパーの中のお湯が自然に落ちきるのを待ちます。30〜40 秒。何もせずに見守るのが正解。

Time1:55
Pour+60ml
Total240ml
初めての方へ
初日は「自分の知っているコーヒーとは、落ち方も味も違う気がする」── そんな曖昧な感触を抱きます。そのどちらとも言えない感覚こそ、始まりの味。記録を残せば、3 ヶ月後に振り返れる旅に変わります。
— 49–50 —
Step 11 · Finish
Finish. Serve warm.
Finish · 11 / 11

抽出後の、仕上げ。

After the pour — the final craft.

お湯が落ち切ったら、いよいよ仕上げ。意外とやることが多いのです。

① ドリッパーを外す ── 完全に落ち切ったら即。「最後の数滴を落とさない」派も正解。

② サーバー内の濃度差をならす ── 上が薄く下が濃い。スプーンで軽くかき混ぜるか、軽くゆする。

③ カップを予熱する ── 冷たいカップに注ぐと一口目で温度が 5〜8℃ 下がる。

④ 香りを嗅ぐ ── カップを鼻に近づけ、立ち上る香りを 2〜3 秒。

⑤ 温度変化で味が変わる ── 65℃ では香り55℃ で甘み45℃ で酸。1 杯の中で複数の表情を楽しめます。

Drip2:30–3:00
SwirlGentle
ServeWarm
初めての方へ
初日と 2 日目で、味の感じ方が驚くほど違うことがあります。「あ、これ美味しいかも。ちょっとココアみたいな甘さ?」── 言葉にできない一瞬の発見は、試行錯誤の先にだけ訪れる贈り物。完璧を求めず、今日の一杯を味わってみて。
— 51–52 —
Chapter II · Arrange

一杯目が淹れられたら、
アレンジへ。

Three easy arrangements.

ブラックの一杯を淹れられるようになったら、次はアレンジの世界へ。コーヒーは、ミルクと合わせるだけで表情が一変する。

アレンジは「手抜き」ではなく、素材の力を引き出す応用。ブラックでは尖って感じる酸味が、ミルクと出会うと「まろやかな甘み」に変わります。

CAFÉ AU LAIT
15g
120ml
牛乳120ml
温度90℃
やや濃いめに抽出し、温めた牛乳と 1:1 で合わせる。ミルクは 60℃ 目安、沸騰させない。
ICED COFFEE
20g
150ml
150g
温度93℃
氷で急冷する方式。サーバーに氷を入れ、濃く淹れたコーヒーを直接注ぐ。香りが飛ばず、クリアな酸味が引き立つ。
AMERICANO
18g
140ml
希釈湯100ml
温度93℃
濃く淹れたコーヒーにお湯を加えて割る。深煎りの豆だと特に、苦味が角の取れた丸みに変わる。食後に。
アレンジの黄金比
ミルク系は 1:1、甘さがほしければ 1:1.3。アメリカーノは 1:0.7。アイスは豆量を通常の 1.3 倍にして、抽出湯と氷が 1:1 になるように設計。
— Arrange —
After · Storage

豆の保存。敵は 4 つ。

Four enemies of coffee.

コーヒー豆はデリケート。空気に触れ続けると、1 週間で香りが 30%、1 ヶ月で 70% 失われるという研究も。

焙煎直後は二酸化炭素が多く味が安定しません。焙煎から 1〜2 週間後が飲み頃、そこから 4 週間以内に使い切るのが理想。

4 Enemies空気高温湿気

① 空気(酸素)は酸化の主犯。密閉容器が鉄則。
② 光は成分を分解。遮光容器か暗い戸棚へ。
③ 高温は化学反応を加速。20〜25℃の常温が理想。
④ 湿気は最も気をつけるべき敵。湿度 60% 以下

常温 ◎飲み頃 1 ヶ月以内はこれが最適。密閉・遮光・涼しい場所。
冷蔵 △出し入れで結露、他食材の匂い移りも。非推奨。
冷凍 ◎1 ヶ月超の保存に。小分け真空で。解凍せず挽き、湯温 2〜3℃ 高めに。

Tip · バルブ付き袋 豆を「バルブ付きの袋」で買えば、袋自体が優れた保存容器。袋内のガスは出て、外の空気は入らない一方向弁。新品の豆ほど二酸化炭素が多く、「ぷしゅっ」と音が出ることも。新鮮さの証

— 53–54 —
After · Pairing (Basics)

一杯を、
もっと美味しくする。

Everyday coffee pairings.

コーヒーと食べ物の合わせ方には、「共鳴」「対比」の 2 つのアプローチがあります。どちらも、身近な食べ物から試せます。

共鳴(エコー)似た味を重ねる── 浅煎りのベリー系 × フルーツタルトなど。対比(コントラスト)反対の味で引き立て合う── 深煎りの苦さ × ガトーショコラなど。


Roast × Food

焙煎度で選ぶ、3 組み合わせ。

Three simple matches.
浅煎り× フルーツ系

共鳴|華やかな酸味とフルーツの甘酸っぱさが重なる。
レモンタルト・ベリーケーキ・フルーツサンド・シトラス系ゼリー。

中煎り× 焼菓子・パン

万能|バランス × 香ばしさ。
クッキー・マドレーヌ・パウンドケーキ・クロワッサン・バナナブレッド。

深煎り× チョコ・乳

対比|苦味と甘み、脂肪分が引き立て合う。
ガトーショコラ・チーズケーキ・アイスクリーム・ミルクプリン。


Scene × Food

時間帯で選ぶ、朝・昼・夜。

Morning, noon, night.
× トースト・ヨーグルト

中浅煎りが◎|バタートースト、グラノーラ、ヨーグルトと合わせて、酸味で目を覚ます朝の一杯。

× サンド・キッシュ

中煎りが◎|サンドイッチ、キッシュ、軽食系ランチの定番。食事の邪魔をしない万能ポジション。

× チョコ・チーズ

深煎りが◎|チョコレート、ナッツ、ブルーチーズなど夜のお供に。ウィスキー代わりにも。

Trivia · 和菓子との相性
意外な発見が多い領域。浅煎り × 和三盆の繊細な甘さ、中煎り × みたらし団子の醤油、深煎り × あんこの濃厚な甘み。日本茶と和菓子の組み合わせ方を、そのままコーヒーに応用できます。

産地別ペアリングは Vol. 2、焙煎度を掘り下げたペアリングは Vol. 3 で詳しく扱います。

— Pairing Basics —
After · Trouble

はじめての
トラブルシュート。

When something feels off.

初めて淹れたコーヒーが「なんか違う」時。失敗かどうか分からない状態も、立派な学びの一歩です。

大事なのは、1 回の抽出で 1 つの変数だけを変えること。挽き目も湯温も抽出時間も一度に変えると、何が効いたのか分からなくなります。

薄い・水っぽい
原因粒が粗すぎる/湯温低い/落ち切りが早い
対処挽き目細く、湯温 93℃、注ぎをゆっくり
苦い・えぐい
原因粒が細かすぎる/湯温高すぎ/抽出時間長い
対処挽き目粗く、湯温 87〜90℃、湯量を増やす
酸っぱすぎる
原因抽出不足/湯温低すぎ
対処挽き目細く、湯温を上げる、蒸らし 30 → 40 秒
ミルで困った
水洗い NGブラシで粉を払うだけ(水は錆と目詰まりの原因)
分解順外す:ハンドル→中軸ネジ→刃/戻す:逆順
フィルターの折り方
互い違いに縦の接着部を手前、底を奥。
湯通し必須紙の匂いを抑え、器具を予熱する一石二鳥
Message
初日の一杯が薄くても濃くても、それは「基準」ができたということ。次の一杯から、あなたは「今日のは昨日より〜」と言葉にできる。失敗は、すべて次への資産です。
— 57–58 —
Vol. 2 · Care

お手入れも、しましょう。

A little care goes a long way.

毎日使う道具は、少しずつ油分と微粉が溜まります。これが酸化すると、淹れたコーヒーに古い油のようなエグ味が移る。

「プロは、味の 9 割は道具のコンディションで決まる」とも。淹れ終わったらすぐに水洗い、これだけで 8 割 OK。

ミルだけは要注意。水洗い厳禁(内部が錆びる)。ブラシで粉を払う、分解できるタイプは月 1 回内部を乾拭き。

毎日
  • ドリッパー・サーバー:使用後すぐ水ですすぐ(洗剤不要)
  • カップ:ぬるま湯+柔らかいスポンジで内側を一拭き
  • ケトル:内側の水滴を拭き取り、乾かす
📅 週 1
  • ドリッパー:中性洗剤で油分を落とす
  • スケール:周囲の粉・水気を乾拭き
  • ミル外側:ブラシで微粉を払う
🗓 月 1
  • ミル内部:分解 → ブラシで乾拭き(水洗い NG
  • ケトル内部:クエン酸でカルキ・水垢落とし
  • カップ:内側の茶渋を重曹で落とす
Why it matters
ドリッパーやサーバーに残ったコーヒーの油分は、2〜3 日で酸化臭を発します。新しい豆をどれだけ丁寧に淹れても、道具が古い味を足してしまう ── それが「最近、味が決まらない」の正体だったりします。
— Care · Routine —
Practice · to Vol. 2

次は、味の違いを
楽しんでみましょう。

Taste the differences.

第 1 回、おつかれさまでした。ハンドドリップの基本動作は、もうあなたの手に入っているはずです。

次の 第 2 回・第 3 回では、色々な産地・精製・焙煎度の豆をお届けします。同じ淹れ方で豆を変え、一杯の印象がどう変わるかを体感します。

だからこそ、次回までに淹れ方の精度を、もう一段あげておいてほしい。今回の豆を数回繰り返し、動きを手に馴染ませておいてください。

まず、「酸味」だけを探す。

一口含んだら、他の要素は無理に意識せず、酸味だけに集中。

それは柑橘(オレンジ・レモン)のような酸味? それともベリー(いちご・ブルーベリー)のような? 果物の味を思い出しながら照らし合わせるのがコツ。

02同梱の豆で、3 回練習。

同じレシピで 3 回。3 回目には手の動きと味の結びつきが見えてきます。頭で淹れる → 手で淹れるへ。

03次の要素へ、ゆっくり。

酸味の輪郭がつかめたら、次は甘み → テクスチャー → コク → 余韻。一つずつ順番に。

04スーパーの豆、試して。

焙煎日入り・バルブ付きの豆なら十分。色々な産地を試すこと自体が、第 2 回への最高の予習。

— 59–60 —
Chapter II · 02

一口目は、
ただ味わってみる。

Just taste. No analysis yet.
同じ豆でも、同じ一杯は二度と淹れられない。その日の湿度、気温、手の動き ── すべてが微かに違う。一期一会の一杯を、手元に残そう。

淹れたての一杯を前に、すぐに「酸味が」「苦味が」と分析を始める必要はありません。まず、一口。

「あ、美味しい」「なんか好きかも」「思ってたのと違う」── どんな感想でも構いません。その瞬間の素直な印象を、自分の中にしまっておくこと。それが、あとで「味覚カルテ」の土台になります。

01
香りAromaカップを鼻に近づけて、まず香りを嗅ぐ。花、果物、ナッツ。何かに似ていませんか。
02
フレーバーFlavor口に含んで舌全体に広げる。酸味、甘み、苦味。どれが強く感じられますか。
03
アフターテイストAftertaste飲み込んだあと、口の中にどんな余韻が残っていますか。長さも心地よさも。
Trivia · 味蕾の話
人間の舌には味蕾が 約 7,500 個、さらに上顎や喉の奥にも分布。味覚は訓練で解像度が 最大 3 倍ほど向上。
— 61–62 —
Flavor Wheel · 味の地図

フレーバーホイール、
味の地図。

The SCA Coffee Taster’s Flavor Wheel.

感じた香味を「ことば」に変える地図。中心から外に向かって、大分類 → 中分類 → 小分類と細かく分岐していきます。

SCA Coffee Taster's Flavor Wheel (JPN 2026)
画像をピンチ/ダブルタップで拡大できます
使い方 · how to read

① まず中心の 大分類(Fruity / Floral / Nutty-Cocoa / Sweet / Sour-Fermented / Roasted / Green-Vegetative / Spices / Other)から選ぶ
② 次に隣の環(中分類)で絞る
③ 最後に外環(小分類)で、具体的な食材名に落とす

大切なのは 「正解を当てる」 ことではなく、「自分が今、何を感じたか」を言葉にすること。迷ったら「自分の知っている食べ物に近いもの」で OK。

画像提供:スペシャルティコーヒー協会 — Coffee Taster’s Flavor Wheel
sca.coffee/research/coffee-tasters-flavor-wheel
Licensed under Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International (CC BY-NC-ND 4.0)

— Flavor Wheel —
Chapter III · 01

今日の 1 杯を、
手元に残そう。

Record today’s cup.

味の印象は、驚くほどすぐに忘れてしまいます。「なぜ美味しかったのか」は、翌朝には曖昧になっている。人間の記憶の仕組みそのものです。

だから、記録します。豆の種類、焙煎度、挽き目、湯温、そして 感じたこと一言。「酸っぱいけど爽やか」「昨日よりまろやか」── そのくらい素朴な言葉で十分。

記録は、Beans. App に任せられます。QR を読み込んで、今日の一杯を数タップで残すだけ。3 ヶ月の変化グラフにしてくれます。

Beans. Appアプリを開く
1アプリを開く
2「第1回 はじめての一杯」を選ぶ
3今日淹れた一杯を記録する
Trivia · 忘却曲線
エビングハウスの研究では、人は学習直後から 20 分で 42%、1 時間で 56%、1 日で 67% を忘却する。味の印象は言語より失われやすく、記録なしで翌朝まで覚えていられる細部はごく僅か。
— 63–64 —
About · Beans. Coffee School

Beans. について。

A school in a subscription box.
Beans. Coffee&RoastersBeans. ロゴ

Beans. Coffee School は、毎月 1 回、スターターキット+教材+旬の豆が届く定期便型のスクール。自宅にいながら、3 ヶ月で 「自分の一杯」 に出会うプログラムです。

Information

Address
(所在地・4/24 打ち合わせで確定)

Instagram
@beans.coffee.school(仮)

Web
beans-coffee-school.pages.dev

Mail
hello@beans.coffee.school(仮)

最新の一杯を、Instagram で見せてもらえたら嬉しいです。
#BeansCoffeeSchool

— Beans. —
Next Volume · Vol. 2 Preview

次回 ──
違いがわかる。

Next: Taste the difference.

同じ「コーヒー」という飲み物なのに、産地が違うと、味はまるで別物になる。

第 2 回は、「産地」と「精製方法」という 2 つの変数を、実際に飲み比べて体感します。アフリカと中南米。ウォッシュドとナチュラル。その違いが、あなたの舌にしっかり届くはずです。

第2回予告
Vol. 2 Preview
違いがわかる
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Vol. 1 実践編 豆知識 — 数値で淹れる
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