同じ豆を浅・中・深の 3 段階で飲み比べ、焙煎の影響を舌で確かめる。鮮度を見る目、そして豆を自分で焙煎してみる入り口まで。
今月お届けしたのは、同じ豆(または同じ産地)を浅・中・深に焙煎した 3 袋。Vol. 2 で「豆で味が変わる」を体感したあなたに、今度は 焙煎度が作る顔の差を見せます。
浅 → 中 → 深の順がおすすめ。繊細な香りから始めて、重い方で締める。逆にすると浅の香りが拾いにくくなる。
焙煎された豆は、生き物のように時間で変化します。良い方向=熟成、悪い方向=酸化。この 2 つを分ける鍵が、知識編で見た CO₂ と 酸素。
CO₂ が強く放出され、ブルームが爆発的。味はまだ固く、香味が閉じている。「寝かせ」が必要な時期。
CO₂ が落ち着き、香味が開花。甘みと余韻が揃う。浅煎りは 7〜14 日、深煎りは 3〜7 日がピーク。
豆のオイルが酸素と反応し、紙の香り・古い油の風味に。ブルームも痩せる。
業界では Scott Rao(コーヒー界の著名コンサル/著述家)らが著書 Everything but Espresso 等で「豆は冷凍可」を推奨し、近年スペシャルティ業界に定着。コツ:① 1 回分(15〜20g)ごとに小分け、② 真空または空気抜き、③ 使うときは常温解凍せずそのまま挽いて OK。3〜6 ヶ月は鮮度が保たれる。大量買いした豆の救済策に。
卒業後の 「次の一歩」 として、生豆を買って自分で焙煎するという遊びがあります。専用ロースターは高価ですが、手網やフライパンで誰でも始められます。
最も古典的な道具。ガスコンロに20cm 離して 10〜15 分、絶え間なく振りながら焙煎。音(1 ハゼ・2 ハゼ)を聴きながら好みで止める。
フタをしつつ、木べらで常にかき混ぜる。受熱ムラを減らす工夫が要る。鉄フライパンは蓄熱性が良く初心者向け。
上手くいかなくても気にしないで。プロが数年かけて習得する技です。でも 「自分で焼いた豆」を一杯目に飲むときの感動は、何にも代えがたい。
3 ヶ月で何十杯も飲んだいま、あなたの舌には好きな方向が確実にできています。それを、具体的な言葉と数字に落とすのが 「味覚カルテ」。
① 酸味:低 1 — 2 — 3 — 4 — 5 高
② 甘み:低 1 — 2 — 3 — 4 — 5 高
③ 苦味:低 1 — 2 — 3 — 4 — 5 高
④ ボディ:軽 1 — 2 — 3 — 4 — 5 重
⑤ 複雑さ:シンプル 1 — 2 — 3 — 4 — 5 複雑
フレーバーホイールや、これまで飲んだコーヒーを思い出して、「好きだった」と感じた香味ワードを 5 つ選びます。例:
このカルテを、次のスライドのマイレシピカードと一緒にお店に持っていけば、店員さんに伝えるのがぐっと簡単になります。
Vol. 1 では食べ物の種類、Vol. 2 では産地、そしていよいよ 焙煎度軸で詰めます。浅・中・深それぞれのスイートスポットを具体的に。
浅煎りの花と柑橘は、レモンタルト/オレンジケーキ/紅茶シフォン/ホワイトチョコ/マカロンなどと共鳴。酸味と甘酸っぱさが重なる瞬間が至福。
中煎りは万能。バタークッキー/パウンドケーキ/クロワッサン/バターサブレ/チーズ。毎日の相棒になる組み合わせ。
深煎りは対比の王道。ガトーショコラ/ブラウニー/キャラメル/チーズケーキ/ティラミス。冷めても強度が保たれるのも魅力。

3 ヶ月の旅で身につけた好みを、1 枚のカードに書き残します。お届けキットに同梱されている マイレシピカードを取り出してください。
① 豆の産地/焙煎度(例:エチオピア・ナチュラル・浅煎り)
② 挽き目(例:中挽き)
③ 粉量 / 湯量(例:15g / 240ml)
④ 湯温(例:94℃)
⑤ 抽出時間(例:2 分 30 秒)
⑥ 注ぎ方のコツ(例:1 投目たっぷり・以降細く)
⑦ 好きな香味ワード(例:ベリー/紅茶/蜂蜜)
このカードをお気に入りの豆屋さんやカフェの店員さんに見せれば、「この人が好きそうな豆」を的確に勧めてもらえるようになります。あなた自身の 「取扱説明書」です。
3 ヶ月のスクールは、もうすぐ終わります。でも、あなたとコーヒーの関係は、ここからが本番。卒業後のパスと、大きな問いを手渡して、旅を閉じます。

3 ヶ月で身についたのは 「淹れる技術」 だけではありません。味を言語化する力と 自分の好みの座標──これがあれば、コーヒーとの付き合い方は自由自在。
季節ごとに 旬の豆を送り続けます。卒業生向けの継続コースでは、浅・中・深の 3 種を毎月 100g ずつ。味覚を育て続けるパス。
マイレシピカードを持って、地元〜旅先のロースターを巡る。カードを見せて相談するだけで、いつもと違う一杯に出会えます。世界が広がるパス。
より深く学びたい方へ。カッピングワークショップ、ホームロースター入門、産地ツアーなど、Beans. の卒業生向けプログラムも。

コーヒーは、地球上で最も気候変動に脆弱な農作物のひとつです。IPCC の予測では、このまま温暖化が進んだ場合、2050 年までにアラビカ種の栽培適地が最大 50% 減少する可能性が指摘されています。
背景にあるのは、気温上昇と降雨パターンの変化、そしてサビ病などの病害虫の北上です。アラビカ種は標高 1,200〜2,200mの冷涼な山岳地帯を好む繊細な品種。気温が数度上がるだけで、既存の生産地は 「適地」 ではなくなります。
すでに、エチオピアでは農家が標高を求めて山を登り、コロンビアやブラジルでは新興産地が高地へ移動しつつあります。さらに、これまで栽培されていなかったタイ北部やミャンマーの高原地帯で、スペシャルティ級のアラビカが育ち始めているのも、近年の興味深い動きです。
希望もあります。World Coffee Research が、病気耐性と風味品質を両立する F1 ハイブリッド品種の開発を進めており、数十品種が既に実用化段階。
あなたがこれから淹れる一杯は、誰かが摘んだ実から始まっています。そして 10 年後、20 年後も、その豆が手に入り続けるかどうかは、いまの私たちの選択にかかっている。── 一杯のコーヒーは、実は「地球との対話」でもあるのです。


Beans. Coffee School は、毎月 1 回、スターターキット+教材+旬の豆が届く定期便型のスクール。自宅にいながら、3 ヶ月で 「自分の一杯」 に出会うプログラムです。
Address
(所在地・4/24 打ち合わせで確定)
Instagram
@beans.coffee.school(仮)
Web
beans-coffee-school.pages.dev
Mail
hello@beans.coffee.school(仮)
最新の一杯を、Instagram で見せてもらえたら嬉しいです。
#BeansCoffeeSchool

3 ヶ月、よく歩いてきてくれました。最初の月、あなたは 「はじめての一杯」 をおずおずと淹れていたはずです。それが今は、自分の好きな座標を具体的な言葉で語れる。
これは、小さな変化のようでいて、実は大きな旅の始まりです。コーヒーは、飽きません。季節が変わり、焙煎士の腕が上がり、あなたの舌が育てば、同じ豆ですら別の物語を聴かせてくれる。
完璧な一杯じゃなくていい。
自分の手で淹れた、
ただの一杯が、いちばん美味しい。
Vol. 1 の最初で伝えたこの言葉、今はきっと、違う響きで届いているはずです。
これからも、時々 Beans. を覗きに来てください。あなたが どんな豆に出会って、どんな感想を持ったか── それが、私たちの次のスクールを育ててくれます。